終章  桜雨

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これが、今日までの井坂京子をめぐる物語のすべてだ。    桜は、盛りを過ぎ、すでに花びらが舞い始めていた。 小学校の正面玄関を出ると、風に乗って、無数の桜雨が降ってきた。 花が終わり、散るときにも桜はこんなに美しい。    校庭の卒業生たちは揃って歓声をあげ、いっせいに京子に手を振った。 その輪の中にジャージ姿のタイジがいる。 二組の生徒たち全員が集まっていた。 一週間前の卒業式に出席できなかった京子とタイジのために、 もう一度ひとクラスだけの卒業式をしよう、 と誰からともなく言いだしたのだった。   
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