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三銃士
「なぁ……アトス?」
木陰で剣の手入れをしていたアトス。その隣で、遠くで遊んでいる少女とポルトスを静かに見つめていたアラミスがぽつりと呟く。視線だけを寄越したアトスに、アラミスは言葉を続けた。
「あのこみてると、彼奴を思い出さないか?」
「ダルタニャンか?」
「ああ」
密かに微笑んで、アラミスは懐かしい記憶を辿るように視線を伏せる。
「無鉄砲で、熱い男。誰にも勝る勇気を持っている男……俺の酒に最後まで付き合えるのも奴だけだったしな」
「おいおい、嬢ちゃんには酒は飲ますなよ?」
「解ってるさ。それに、俺はもう酒は飲まないしな」
おどけるアトスに、にやりと笑って返す。アトスは少し淋しげに笑みを浮かべると、剣を磨いていた手を止めて、アラミスをみた。
「やっぱり、僧になる夢は捨てられない、か」
「ああ」
「そうか」
長年一緒にいたからこそ解る本気。それ以上を追求することはせずに、アトスは木の幹に背中を預け、帽子を目深に被り直した。
「寝る気満々だし」
「いいだろ、今は休憩時間だ」
「いいけどさ、つまんないなぁ」
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