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ああ、やっぱり初は可愛いなぁ、なんて僕の脳内での台詞再生数がダントツでトップであろう言葉を今もまた心の中で呟いてから、僕はゆっくりと目を閉じる。
思い浮かぶのは愛しき少女の顔。僕の脳内で想像回数がダントツで以下略。
「ねぇ、聞いてるの?」
すると、僕があまりに自分の世界に浸りすぎていたためか、パチン、と。痛みなんか通り越して快楽の極みに達するかのようなビンタを頂いた。
目を開くと現れる、愛しき少女の顔。かわいいなぁ。
「聞いてるよ。僕が初の言うことを聞かなかったことが今までで一度でもあっただろうか、いや、ない」
「でも、ぼーっとしてたじゃん」
「どんなにぼーっとしていても、どんなに死にかけていようとも、僕が初の言うことを聞き逃すなんてあるわけないだろ!!」
「うわっ、カッコいい! けど、気持ち悪い……。しかもなんで反語なのさ。今やってるのは数学だよ?」
「僕は反語という強調技法はこのために存在していると自負してやまない男だからな。強調ってのは初のかわいさを際立たすためだけにあるといっても過言じゃない。いやむしろ初の可愛さを伝えるには弱すぎるな、強調!」
断言した。
でも残念ながら当人の初は同意はおろか、愛想笑いすら返してくれなかった。
「……やめてよ」
「正直いうと、初からの言葉なら世辞だろうが罵倒だろうが、全て愛の告白に聞こえてしまう。ゆえに今の台詞は僕のなかでは『愛してる』として脳内処理されたわけだ。成る程。――初、僕もだ!」
「ないわっ」
抱きつこうとしたら、グーで殴られた。痛かった。気持ちよかった。
◆
椎名初(シイナハツ)という人物は、僕の彼女であり、世界で唯一無二に好きな人であり、もしよろしかったら一生抱き合いながら過ごしていたいっていうほど離れたくない人であり、とどのつまり僕の全てだ。
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