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元来、僕という人間は何事にも拘泥することなく日々を謳歌していたやつで、これからもずっとそんな人生を選んでいくのだろうな、なんて漠然と考えていた。
そんな僕がここまで一人の女性にのめり込むと、誰が予測できていただろうか。
一変した。
これまで何も飾られていなかった僕の部屋は彼女との思い出の品々で一杯となり、頭のなかは彼女のことで飽和した。
部活をすれば三日で退部、勉強すれば三分で熟睡のこの僕がだ。
恋ってのが人を変えるっていうのは本当のことのようだ。
ああ、初、はあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあははあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあ。
「ああ、初って可愛いなぁ。まるで全世界に存在する可愛さを凝縮したかのようだよ。初と同じ時間軸を生きることになった周りの奴らに同情しちゃうなぁ」
「……いや、ごめん。それは言い過ぎだろ」
おっと。
心の声があまりに貯まりすぎてメモリースティックをオーバーして口から吐き出てしまったようだ。
自重しなければ。流石にここは学舎だ。初に対するいらぬ注目を与えてしまう。
「どっちかっつうとおまえに集まってるけどな」
そんなことをいってくるのは級友の光成だった。
「ってか多分それはおまえもう病気の域だぞ」
「恋ってのは元々病気なんだ。僕は欲望に忠実に動いているに過ぎない」
「それが行き過ぎだと思うんだけどな。もしかしたら初ちゃんだって嫌がって――ぶぅ!?」
殴った。
「てめぇが俺の初を軽々しく名前でよんでんじゃあねぇよ! ああ!? のされてぇのかこのゴキブリ野郎が!」
「ひぃ……すいません」
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