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……おっと。
取り乱した。
反省しろ、反省。
光成のやつは僕が激怒したのが一瞬でトラウマになったらしく、おどおどとした調子で、
「で、でも……結構……し、椎名さんも迷惑してるんじゃないかな……?」
「……そうかもしれないな」
「え?」
呆けた顔をする。
「なに、自覚あんの?」
「当たり前だろ。僕だってそれほどバカじゃない」
「なのに……やめないのか」
心底不思議そうな顔をする光成のやつに僕は懇切丁寧にいってやる。
「例えば。例えばだ。僕がここにきて初に迷惑かけちゃったかなーってテンションを下げて接してみたりする」
「する」
「それは果たして僕なのか?」
「はぁ?」
「今まで僕は自分自身について考えてきた。僕という存在が示すものは、僕というアイデンティティーはなにか、と」
「……うん」
「色んなことを試してみたが、どれもこれもくそったれだ。僕を表すには程度が低すぎる。そして悩むこと十数年――ついに見つけたんだよ!」
突然の大声にクラスメイトが肩を震わせた。
「今まで何もなかった僕に全てを与えてくれたんだ。そう、愛なんですよ、愛! 今までそれこそくそったれだと思っていたが……確かに愛とは素晴らしい。ま、なんだ。こんなグダグダいってもわからんだろ。要はな、初は世界一可愛いってことなんだよ!」
豪語すると、周りからぱらぱらと小雨のような拍手が送られた。
ぐるりと初の方を向くと、自席でこれでもかというほどに小さくなって俯いていた。耳まで真っ赤になっている。
ああ、かわいいなぁかわいいかわいいかわいいかわいいかわいい――けど。
すこしばかりやりすぎたかもしれん。
◆
「バカバカバカバカバカっ! 修なんてもう知らないっ!」
誠に残念ながらやりすぎたようだった。
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