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初という人物はとてつもなく引っ込み思案で人見知りで内弁慶だ。
さきの会話から想像できないほど、僕や中のよい友達以外とは全くといっていいほど話さない。クラスメイトなどにはいつも愛想笑いでペコペコしている。
厚顔無恥状態の初と唯々諾々の初。両方とも初である以上愛すのは造作もないのだが、強いて言えば僕は前者の方が好きである。とはいっても後者あっての前者ともいえるので一概には言い切れないが。
ああ、クラスメイトに話しかけられて取って付けたような笑みで慌てて応対してる初可愛いなぁ。
「あんたのそれはもう病気だと思う」
「え? 初可愛いだろ?」
「……」
声をかけてきた人物、輪島は僕がほぼ条件反射で答えてしまう宇宙の心理にしばし呆然としていた。
彼女は先述の初が気兼ねなく話すことのできる数人の内の一人だ。なんでも幼稚園の頃からの付き合いらしく、二人の友情は深いものなので、さしもの僕もそれは容認せざるをえない。
「で、何? 僕暇じゃないんだけど」
「どー見てもボーッとしてるようにしか見えないよ。あのさ、あんたの頭のなかは初で一杯なわけ?」
「いや、初から色々と派生していってるから厳密には初だけを考えてるわけじゃないけど。現にさっきの授業中は初の朝食について考えてた」
そして八割方ジャムトースト!
「どちらにしたって初関係のことなわけね」
輪島ははぁ、と明らかに何かに困っているかのようなため息を吐いた。
「なんだ? なんか困ってんのか?」
「あんただあんた!」
やっぱり初のツッコミの方が好きだな。アレは癖になる。早く放課後にならないかな。
「で、本題はなんだよ。いちいちこんな回り道しないでさっさと言ってほしいもんだ」
「原因は百パーセントあんただけどね。私のいいたいことはたったひとつ。あんた初にくっつきすぎなんじゃないの?」
「好きなんだから当たり前だろ。これでも我慢してるんだぜ。できることなら授業中ずっと初のことを抱き締めていたい」
あ、初とクラスメイト(女)との会話が終わった。安堵の息をついてる初可愛い。
「まあそこまで言われるとかえって清々しいんだけどね。とりあえず浮気の心配はなさそうだ」
「あ?」
「うわごめんなさい」
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