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浮気だのなんだのっていうのはとどのつまり不足から起きるものだろう。
愛情の不足、魅力の不足、拘りの不足、執念の不足――。
その点僕たちはパーフェクトだ。初は銀河一魅力的だし、僕は地球一初を愛してるわけだし。
だから浮気どーのこーの言われたって対岸の火事。勝手にやってくれって話。こっちには関係ないから。
「下らない話だな」
一蹴して初の方を見ると、その姿は消えていた。行動パターンから察するに、御手洗いだろう。
「さて」
「いやいやどこいくのよ、待ちなさいよ」
持ち上がりかけた腰を再び椅子に押し付けられた。
「なんだよまだ用があるのかよ」
「ところで初は多分トイレだけどさっきの『さて』は何のさてなの?」
「は? トイレに行くに決まってるじゃん」
叩かれた。
輪島は光成と違い立ち直りが早かった。
「親友としてそれは流石に見過ごせませんな」
「おまえの意見は聞いてない」
「でも――初の意見も聞いてないでしょ?」
思わず立ち上がろうとしていた足の力が弱まった。
「はてさて、本当に初はあんたのことが好きなのかねぇ」
「なに?」
一瞬輪島のいっていることが理解できなかった。理解が追い付いても反応は追い付かない。
ってかなにそれどういうこと?
「何信じられないって顔してるの。確かにあんたが初を溺愛してるのは一目瞭然だけど、逆もまた真とは限らないでしょう」
「……!?」
あり得ないだろ。だって初だぞ。あのかわいくてかわいくてかわいい初だぞ。
「そもそも初からあんたに愛情をみせるの見たことないし」
光成もなんかそんな感じのこと言ってたような……。くそ、あの時聞き流したのはいけなかったか。
「あの子大分優柔不断だし、流されてるだけっていう……あ」
いや待て僕は初が好きだ。それが全てだったはず。いやだけどそれじゃあいやまてそれはだけど初はかわいくてかわいいってことはそれはイコールで好きってことにならないないやしかし
「ご、ごめんって! 帰ってきて!」
「おう」
気がつくと僕は必死の形相の輪島に揺すられていた。
がしがしがしがしがしがし。
「いてぇよ!」
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