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「そんな絶望しきった顔をさせるつもりはなくて……。ただ初があんたのラブコールを重荷に感じてるようにみえたから」
もう輪島のいうことなんて一抹も頭のなかに入らない。
「ば、ばかな……」
浅はかだった。
そうだ。スタートは僕が初を好きでそれが全てであったはず。初が僕を好きになるのは言ってしまえば、オマケのようなものだった。当時はそれでよかった。
今はそれでは満足できない。
お互いの思いがあっての相思相愛なのだ。
――つまり。
初の気持ちを確かめる必要がある。
「おーい、修? ごめんってば……うわ!?」
僕は立ち上がった。
「わかったよ、輪島。僕は確かに押し付けていただけだった。それがどんなものなのかもしらずに。そうか。これじゃただの一方通行の恋なんだ。愛のためには相手の気持ちも重要。ふふふふふふふふ」
「…………」
◆
第一段階。
いつも下校の際には僕の方から初を誘っている。初から誘いを受けたことはないのだ。まあ、授業が終わったその刹那には僕が初の隣にいるからなんだけど。
よって。
僕は今回ギリギリまで待つ。
席を立たないで寝たふりを決め込み、初の出方をうかがってみる。
僕のことが好きならば、少なくとも僕と帰路を共にしたいと思っているのならば、声をかけてくるはずだ。
そもそもすべてにおいて受動的な初が能動的に動くのを見たことがないし、これは新しい初を見定める好機でもある。
初かわいいなぁ。
実験開始。
放課後を告げるチャイムが鳴って、僕は机に突っ伏して傍目から見たら寝ていると判断される姿勢をとった。
腕を組んだその隙間から横目に初の様子をうかがってみる。
初はまず教科書やら筆箱やらを整理し始めた。
綺麗に揃えてそれらを鞄の中に詰め込むと、ちらりと一度僕の方を見る。
それからもう一度鞄に目を落とす。再度僕の方を向く。
そんな挙措を数回繰り返した。
ああもうその挙動不審がたまらなくかわいいどうしようかな声かけようかなでもすこしばかり恥ずかしいなっていう初の気持ちが手にとるようにわかるっ。
できることならこのまま飛び起きて初を抱き締めてそのまま下校したい!
したいしたいしたいしたいけど我慢だ。
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