君がため

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君がため

明るい日差しが火口からそそぐ昼、龍達は思い思いの時を過ごしていた。 ある龍は自分の店先で、客の龍を捕まえ外の世界について話していた。 又あるものは中央の舞台を観戦していた。 谷は外の世界よりゆっくりと時が流れる。 しかし、それを差し引いても龍の一生は人とは比べ物にならないほど長い、彼らはその長いときの中ひたすらゆっくりそして穏やかに日々を過ごしていた。 「ねぇ!火龍四代目若様見なかった!?」 青い長い髪を二つに結んだ幼い顔の少女が道行く者達に尋ねている。彼女の名は李狛朔恋、四代目水龍若李狛宝楼の妹だ。 「火龍四代目若様なら水龍四代目若様と神殿の方に向かわれました。」 道行く龍が軽く頭を下げそう答えた。朔恋はその龍に口早にお礼を言うと、神殿に向かい走り出した。神殿は祭事などに使われる神聖な場所だが、谷の者には解放されており、好きに入ることが出来る。もっとも神殿には大した物はないので、神殿に出入りする者など限られている。
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