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「あら、やだ奥さん。ここ、夢の一軒家が立ち並んでるわぁ」
って、おばさんの声が近くから聞こえてきそうな住宅街のど真ん中に俺は今、仁王立ち、いや、突っ立っています。
ええ。鈴木先生担当になりましたとも。どちらを選んでも死ぬという選択肢から逃れられないのだから、男としてチャレンジ精神いっぱいで行ってやろうと思ったんだ。
いざ来てみると、其処は本当にこんな所にうちの出版社を一番に支えてる大先生が暮らしているのか?と疑いたくなる程の普通の住宅街だった。
「イケ長が言うには、ここら辺の筈なんだけど……」
いつのまにか、俺がテキトーにつけた『イケ長』なんてあだ名を自分でも使っていることに気づく。
そのイケ長の書いた地図を見ながら鈴木先生宅を探してはいるが……。
突然、ゴミ捨て場のポリバケツを蹴飛ばしたい衝動にかられた。だが、社会人として、一社会人として、留まった。
「くそっ、アイツ!会社の仕事以外絶対できねぇな!下手くそすぎて、地図が分かりにくいんだよ!」
そう。汚い、というより線が変、と言っておこう。間違ってるなんてことをイケ長が、ではなく俺が認めたくないから。
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