変な展開になりました

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 とても元気に。とても健やかに。とても儚げに。七瀬は笑みを俺に見せた。  もう、他人か。  一瞬高鳴った心臓はあっという間にその解釈により落ち着いた。そのまま話し込む事もなく、俺は自分の席に一人で座る。  七瀬の周りにいた女子がざわざわと困惑する。そりゃ昨日まで名前呼びし合ってベタベタだったカップルが、急に姓で呼んで素っ気ないのだから。  俺はそのまま何もやる事なく一人突っ伏す。今のご時世では普通一人きりでポツンと机に寝そべるやつはいない。何故なら一般人なら隣にライブレスがいるに決まっているから。 「七瀬、羽炭と何かあったの?」  伏せていると不思議と耳が冴える。そんな七瀬の友達の質問が耳に入った。 「うーん、まぁいろいろと。ねぇそれよりさ……」  それを七瀬は適当に流して、とっとと違う話題を振っていた。  もう周りの女子は気付いただろう。別れたと。  正直不本意な別れ方だ。お互いに好き合っているままで別れたのだから。  ……いや、もしかするとそれは間違いかもしれない。俺は七瀬の愛に答えられずに逃げ出した。つまり俺は本当に七瀬の事を好いていなかったのだろう。  もちろん今も自意識は七瀬が好きだと嘆いている。しかし深層心理が、痛め付けられても我慢できる程の愛を俺に送る七瀬に答えられる程愛していないと言っている。 「……どうしろってんだ」  もういっそのこと、ライブレスのアンチを辞めてしまおうか。  そう考えながら、俺は一日中独りで過ごした。
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