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「親父、これまさか……」
「そうだ、ライブレスだ」
西暦三千と六年、人類は人間を造り、そして飼う時代に踏み切っていた。
「マジか……あんまり気が進まないんだけど」
「知ってる」
「じゃあ何で……」
「明日から海外に出張だから」
「……は?」
科学技術は千年経っても大した進歩はなかったが、バイオテクノロジーは飛躍的に進歩した。
そのおかげで精子と卵子の人工精製、そして遺伝子組み換えを可能にし、生まれながらにして一生涯同じ容姿を保てる人工人間、『ライブレス』を完成させた、……らしい。詳しい事は企業秘密なようだ。
構図は簡単、見た目は大人、中身は子ども。つまり中身だけを赤子状態から育成し、自分好みに育てる事ができるのだ。
ただし容姿が生涯同じであるため、寿命は短い。持って三十年で、中身を育てると言ってもやはり生物的なからくり人形、機械に過ぎない。
そんな者を飼ったら俺は情が移りそうで嫌だった。だから買わなかった。
けど、親父が買ってきた。誕生日プレゼントとして、出張という事実と一緒に俺に押し付けた。
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