0人が本棚に入れています
本棚に追加
小鳥の囀ずり。
窓から差し込む朝日。
何時もと変わらない朝。
欠伸をしながらベッドから起き上がる少年の瞳には枯れ果てた大地が映った。
「ここももう駄目なのかな…」
悲しげな表情を浮かべ、少年はベッドのそばに立て掛けてあった細身の剣を取った。
彼の名はエル・エナール。辺境の小屋にただ一人住み、世界の変化をその身に刻み続ける少年である。
エルは簡単な身支度を始めていた。
普段着の上に使い込んだ軽めの鎧。
腰袋には金貨―スェルを僅かばかりとまた僅かばかりの食料。
そして鞘を背負い小屋の戸を開けた。
朝日が眩しく目を細めた。
「お前ら…」
彼の旅路を送るのは毎日囀ずる小鳥達であった。
小鳥達は小さな身体で一生懸命に鳴いていた。
「俺が出ていくの寂しいってか?…ありがとうな。
でもしょうがないんだ。世界の行く末を見守る者としてその役目わ果たさなくちゃいけないから。
お前らも、早くここを離れるんだぞ?
生きていればまた会う事もあるんだから」
そう言うと小鳥達はその言葉を理解したかのように鳴くのを止める。
エルはそれを見て少しだけ微笑み小屋を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!