プロローグ

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プロローグ

これは“彼女”の記憶で これは“私”の物語で これは“皆”の幻想で それは“あなた”の願いかもしれない。     ここからしばらくは、 “私”が語りましょう。           19XX年 11月25日 無事、元気な女の子が生まれました。 優しい両親の、豊かで温かい愛情に包まれ、 13になるまで何事もなく、過ごしていました。 しかし“彼女”の周りで、不思議なことが次々と起こり始めました。 《描いたことが現実に起こる》のです。     どうしてそんなことができてしまうのか、 それは誰にも分からないまま。   “彼女”の両親も、自身にさえも。 もともと大人しいためか、あまり人と接することもなく、   教室にいても、 ほとんどの時間を1人で過ごしていました。 ただ絵を描くことだけが、楽しみで。   休み時間、 放課後の美術部の活動、 帰宅してからの空き時間、 ずっと絵を描き続けていました。 不思議な力は本当に不思議なことに、 その“世界”の中に“自分”を入れてしまうと、現実に起こることはないのだそうです。     つまり自分の欲するものを描いても、それはただの“絵”となるだけ。 それが、良かったのか悪かったのかどうかは、 “彼女”にしか分からないことですが。 ところで皆さんは、第六感というものを、ご存知でしょうか? よく虫の知らせ、なんて言葉も聞きますが、 馴染みがあるのは、   やはり、目には見えないはずのものが見える、という意味合いのほうでしょう。 ここまで言えば、感付いた方もいらっしゃると思います。 そう、“彼女”もそういう人間なのです。 見えるようになったのは、絵についての、不思議な力を持ち始めた頃からでした。     誰にも、特異なちからのことを話さないまま、少女は成長していきました。     そして、つい先日17歳になりました。 あの頃から4年経った“彼女”は、行動を起こし始めました。 さて、ここからが、聞いて頂きたい“物語”の始まりです。 .
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