英雄の卵はそして手を繋ぐ

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一杯悩んだ後、結局、帽子をしっかりと被り直して僕は診療所を出た。汗ばんだ手には銀貨を握って。 確かにお父さんとの約束で、知らない男の人から物を貰ったらいけないって決まってるけど、ガンセさんは知ってる人だから良いよね? 向かうのは、お父さんと一緒に良く買い物に行くお茶屋さん、『ティー・カーベル』。 お父さんはお茶が好き。特にここの茶葉で煎れたテミルティーがお父さんの好きな物。昨日、ガンセさんからの伝書鳩が来てからお父さん一日寝ずに頑張ってたから、お父さんもご褒美貰っても良いよね? そのティー・カーベルの妖精が踊る看板が見えて来るとお父さんが喜ぶ顔が浮かんで僕も少し嬉しくなってくる。でも……。 「お兄ちゃん、待ってよ~」 僕と同じくらいの男の子がボールを持って走ってくる。その後ろを追い掛ける小さな女の子。何故か僕はその二人に目が行ってしまった。 「あっ!……痛いよ~~!」 その女の子がお兄ちゃんに追い付こうと走っていて、つまづいてしまった。そのお兄ちゃんはその子に走り、僕も心配になってそちらにゆっくりと近付く。
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