甘党、一匹狼と出会う

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狼はポケットから小さな手帳の様なものを取り出した そしてそれを祐に見せるようにつき出した 「これ、真坂のじゃ?」 「えっ?確かあるはず…」 と自分の胸ポケットをさわると… ない 「僕の生徒手帳うううううううう!!」 「ってオイ!?」 祐は勢いよく生徒手帳を奪おうとしたため、狼が反射的に後ろに下がった しかし祐はそこで見事に 《こけッ》 コケた 「ってえええぇ!?」 「ちょ!!」 祐は思わず目をつむった しかし… 訪れるはずの衝撃が無い 代わりにコンクリの床の感触でもなく布の感触がした 「真坂って…よく転ぶな…」 あきれ気味の声がすぐ近くから聞こえた ゆっくりと目を開けると… 「大丈夫…だよな?」 すぐ目の前に狼の顔があった 真っ白になった頭のなかが色づき始めてようやく自分の今の現状を理解した 狼の上にいるとう現状に 祐は顔が熱くなるのが分かった 「ごごごごごめんなさいっ!!」 急いで退こうと体を起こすと狼もあわせて体を起こした そのため余り顔の距離が変わらず 急いで離れようとした するとイキナリ狼に腕を捕まれた 「待て」 今までと違う声音にビクリと体を強張らせ固まる祐 ひとつの不安が頭をよぎる 『まさか怒らせた!?』 喧嘩っぱやさで折合は有名だ 祐はさっきまで熱くなっていた顔から血の気が引くのが分かった 狼は少し眉間にシワを寄せて祐を見ている 「お前さ…」 さっきまで「真坂」だったのが 「お前」に変わりにこれは怒らせたと確信した祐 するとスッと手が延びてきた 『殴られる!?』 そう思いキュッと固く目をつむる しかし感じた感覚は痛みではなく後ろ髪を少し引っ張られたような感覚だった 恐る恐る片目を開けると… 狼が今まで見たことも無いような優しい笑顔で祐を見つめていた 「やっぱさ」 不意に口を開く狼は優しく言った 「お前、髪ほどいてた方が可愛いよ」 ドキン、と祐の心臓が跳ね上がった 男子にめっっっっっっったに言われない言葉を まさか狼の口から聞くことになるとは予想もしていなかったのだ
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