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組んでた腕を解いて手を擦り合わせる。
「だからな……。」
そして彼は恥ずかし目もなくこう言う。
「だから、オレはエレナの事が“好き”だ。」
雪が降り続ける中、曇りなき笑顔が花を咲かせる。それを見て私は気付いてしまう。
あぁ、きっと私は太陽を待っていただけなんだ。
本当は太陽を待っていたのに、照らされるのが怖くて距離を開けた。私は弱かったんだ。自分の弱さを棚に上げて、相手を侮蔑していた。
でも、そんな私を彼は“好き”と言ったんだ。
「フッ……フフッ……。」
「へっ?えっ?」
押し殺す様に笑う私に驚いたのか、キョトンとしながら情けない声を出している。
「あんた、普通嫌いって言われた人に好きって返す馬鹿がいる?」
「おまっ、人を馬鹿呼ばわりして笑うなよ!」
そう怒鳴る彼はいつもと何ら変わらない彼。
「あっ、そろそろ戻らないと時間に間に合わないんじゃないかしら?」
「人が折角………。」
彼を余所に私が町へ帰る為に歩き始めると「ハァ」というため息を吐いて彼も歩を進めた。
時折サクサクと雪を踏む音を鳴る。
町へ戻る。『ありがとう』そんな気持ちを心の隙間にしまいながら――――。
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