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「ちょっと待って。盟約って、それだけ?」
群れることへの全員分の合意を得、盟約の表明をしたところで突込みが入る。
メンバー内の口悪キャラ、カップルの女だった。
「何か問題があるなら聞くが」
「大有りよ! 利害共有で結ばれた仲だってのにそこを明確にする規約がないし、裏切りの対策にだってなってないじゃない。
お互いを信じよう、なんていう甘ちゃんな考え、ここでは端っから否定されてるんだから、もう少し考えたらどうなの!?」
「ここでの利害はほぼ、常に生死にかかわると見ていい。下手なことをすればそれだけ全員の生存から遠のき、死が近づく。裏切りの罰があるとしたら、それはおのずと結果に現れるだろう」
死というカタチで。
「馬鹿か。その罰が、必ず裏切った当人にだけ及ぶって保障はどこにあるわけ?」
「ならば逆に聞くが。ただでさえ余裕のない状況だ。仮に罰則を作ったところで、裏切りにより更に余裕をなくした俺たちが、裏切ったそいつに罰を執行しにいくのに余分の力を割いていられるのか」
「それは……」
窮する。
ずるい問いだったかもしれない。
今まで見ず知らずだった相手に、命を預けることになるかもしれない体制。
警戒するのも無理はない。慎重に、臆病になってしまうのもわかる。
が、
「お互いを信じること。何も、馴れ合いの甘い考えでソレをしようというのではない。
ただ、そうするしかないだけだ」
他にカードがない。
無条件の信頼には穴が多いが、疑心暗鬼になっていては更に穴が多いし、そもそも始まらない。
だから、
「無条件に信じろ、というのではない。飽くまで、互いの救いを利用しあう関係だ。穴はある。が、他の可能性を考えた結果、一番マシなカードがこれというだけだよ」
最善は望むべくもない。
ならば、次善次善で。
利を取れぬのならば、損をなくす。
それが、俺たちのできるもっともマシな方法だろう。
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