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しかしおかしなものだ。
泥棒にお茶を出してあげた挙げ句、慰めている構図なんて希少過ぎるだろう。
なにやってんだろうな、俺は……
内心ではそんなことを思いながらも、とりあえず話を進めることにした。
「で、本題に入らせてもらうけど……。どうしてそんな格好で、うちに忍び込んだんだ?この泥棒」
そう。
なにを隠そう、こいつの格好がまたやばかった。
大河ドラマでお姫様がよく着ているような、色とりどりの装束姿。
カップラの容器に映っている十二単――そう、まさに写真と瓜二つの少女が、目の前に実在していた。
艶やかで古きよき女性を彷彿させるような、美しい黒髪。
でかい二重瞼のはっきりとした瞳は、どことなく強い意思を感じさせる。
コンタクトレンズでもしているのだろうか。瞳は碧玉のような透明感を宿していた。
艶のある桜色の唇は見ていると、引き込まれそうになる。
整った輪郭に雪化粧のような白い肌が、少女の儚さを物語っていた。
なにより驚いたのは髪の長さだ。
正座しているから正確には判断しかねるが、カーペットに広がる髪の毛を見ていると、立ったら足首くらいまで有りそうな気がした。
思わず見惚れてしまう綺麗な顔は、悲哀の色を浮かべたまま、俺を見上げている。
あぁ……まずい。非常にまずい。
意識し始めたら、まともな言葉が出なくなってきた。
よくよく考えたら俺は今、女の子と二人きりなのだ。
それも超がつく程のべっぴんさんと。
顔立ちから俺と同じくらいの歳なんだろうけど、正直困った。
めちゃくちゃ可愛い泥棒がいきなり強襲してくるだなんて、妄想以外で引き起こるイベントではないからだ。
少女は目を伏せると、また泣きそうな顔になる。
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