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引き攣った頬を元に戻すことができない。
未だに女の子の言った意味が理解できなかった。
「あの……。なんで?」
「麺が伸びてしまいます」
「いや、まぁ……。もう手遅れだと思うんですが……」
「まだ大丈夫です。だから……早くっ……。蓋を……!」
苦しそうな表情で懇願してくる女の子。
甘い吐息を漏らしながら苦しむ姿が、妙に色っぽいのは気のせいだろうか。
「開けてっ……!お願い……!」
妙に興奮してきたのは俺だけだろうか。
とりあえず開けて欲しいらしい。
つか、いつまで乗せてんすか?
つか、俺のだしね?
突っ込み所は満載だったが、一時的に目を瞑ることにした。
この後、ヤク中の後遺症みたくまた暴れられても厄介だ。
混沌とした頭を抱えながら、女の子の頭上にあるカップラーメンの蓋を開けてやる。
開けた瞬間、美味しそうな匂いと湯気がラーメンから立ち上る。
腹減ったなぁ……
「……ありがとうございます。助かりました」
「そ、そんな大袈裟な」
よくわからないが、感謝されてしまった。
控え目で破壊的に愛らしい笑顔で。
一瞬、女の子の全てを許しちゃおっかな☆
なんて心境に刈られたが、俺は寸でのところで思い止まる。
泥棒は泥棒。幾ら泥棒が可愛らしい変態でも、この罪は償わせなければならない。
こうした手口で相手の心につけ込み、何度も同じ場面を切り抜けてきた可能性もあるのだ。
俺は今までとは違う男だってのを、見せてやりたいと思う。
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