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「優しい方なのですね」
「ラーメンの蓋開けただけなんすけど……」
「いえ、そこが重要なのです。危うく窒息するところでしたから」
やっぱり痛いなこの子……
妄想の世界に完璧キマッちゃっている。
一体なにが目的なのだろう。
妥当にみて金品――か。
話をさっさと進めるべく、本題を切り出した。
「話は戻りますが、どうして泥棒なんか……?やっぱりそういうことは、良くないかと……」
「え……?」
女の子は言われたことの意味を、わかっていないのだろうか。
不思議そうに首を傾げる。
「いや、だから泥棒は良くないかと……」
繰り返す俺の言葉に脳が追いついていないのか、しばしの間。
内容をようやく理解してくれたのか、弾かれたような顔をする女の子。
「はい、確かに泥棒は良くないものと私も思います!」
何度も頷きながら俺の意見に賛同する。
余りに力強い口調だったので、思わず引いてしまう。
泥棒のくせに、やたら熱意を込めて自分を否定する奴だ。
「うん……。だからそんなことをしたら両親を悲しませるだろうし、なにより自分が後悔すると思うんですよ……。あの時、あんなことしなければよかったって」
「確かに――。考えるだけで心痛な思いです……。お察しいたします」
悲しそうに俯いて目を瞑る。
実は自分のしたことを悔いているのかもしれない。
これなら許してやってもいいんじゃなかろうか。
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