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俺は今、ある選択肢を前に決断を迫られていた。
今日まで生きてきた十六年間という歳月。
その中でも自分にとって、五本指に入る程、慎重にならざる終えない状況に直面していた。
可哀相そうなくらい、不幸続きな暮らしを謳歌(おうか)してきた自分。
そんな俺にまた一つの黒歴史が刻まれようとしていたのだ。
「落ち着け……落ち着け、俺……。ひっひっふー、ひっひっふー」
目を瞑り、出産時の妊婦さんもよく使う呼吸法で、上手く気持ちを落ち着かせる。
驚くかもしれないが、実は俺の人差し指には『神様』が宿っている。
こうした状況で何度もその『神様』の信託に救われてきた。
今まさにその神様の力を発動させようとしていたところだった。
汗ばむ掌には野口英世が三枚、しっかりと握られている。
早めに英断してこの場を去る――。
今はそれだけに集中しよう。
風でがたがたいっている頼りない壁を背に、俺は目の前のエロ自販機を真摯な瞳で見据えた。
そっと人差し指を前に突き出す。
額から流れ落ちる汗を拭い、指先を『美幼女 未来ちゃん 十歳』のタイトルに合わせた。
そこから滑るように左へとスライドさせる。
ちょうど『悶える女子中学生 しおりの秘密』で停止。
ふっ……、とキザな笑みを漏らし、優しく目を細めた。
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