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ストレスの原因である猪瀬に、今日も散々な目に合わされてきた。
エロ自販機に通うようになったのも、あいつのせいとみていいだろう。
趣味や特技もない奴は、そうやってストレスを発散しないことにはこのご時世、生きていけないのだ。
だから、エロ自販機は俺のライフラインみたいなもんだ。
衣・食・住・エロ自販機。
俺が生きていく上で必要な生活の四柱だ。
とまぁ、これが俺、磯貝義経の事情である。
学生鞄としょうもない戦利品を手に、自宅に到着。
着くとリビングに明かりが灯っていた。
どうやらうちの姉上様がご帰宅なされているようだった。
OLとはいえ、結構重い仕事を任されているだけに、普段は帰りが遅いのだが、今日は早かったみたいだ。
さばさばした性格だし、なにより自由奔放な人だからな。
「ただいま」
俺がリビングに入ると、姉貴は既に出来上がっていた。
キッチンのテーブルに突っ伏せたまま、いひひ……と、笑っている。
サイドには空になったであろう缶ビールの山。
帰って早々嫌なタイミングに出会してしまった。
今日はマジツイてないぜ……あ、今日もっすね。
姉貴は俺の気配に気付いたのか、ゆっくりと顔を上げた。
片手にある缶ビールを一気に煽り、とろんとさせた瞳をしばらく天井に徘徊させる。
磯貝 菜月(いそがい なつき)。
二十七歳。一部上昇企業のOL。
姉貴は救いようのない酒乱だが、昔はキャバ嬢で一世を風靡しただけのことはある、容姿の持ち主なのだ。
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