純粋

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欲しいものを手に入れる快感は、どこから訪れる? それは他者との格差。 羨望の眼差し、嫉妬に満ちた瞳。それら全てが自身の糧となる。 葵は生まれながら全てを手にしていた。そして環境も同じ。 葵の周りには同じ人種が集まっていた。生まれながら将来を約束された者達。 そこには多少の格差は在ろうとも、葵の欲望を満たす糧とは成り得なかった。 でも、人は違う。 手にした人材が優秀であれば、それは金銭では手にし得る事の出来ない至高の存在。 それが、愛する者で有れば全ての垣根を超えた嗜好とも成り得る。 幼いながらも高い知性を備えていようとも、精神の未熟な葵には、その存在が麻薬以上の美薬となった。 コンコン、 部屋の扉が叩かれる。 「どうぞ」 開け放たれた扉の向こうには、屈託の無い少女の笑顔が在った。 「いらっしゃい、今珈琲を用意するから」 葵はそれ以上の笑顔を造って少女を迎え入れた。 獲物を逃がさない。 純粋な悪意に満ちた瞳で・・・。
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