純粋

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自分の国を離れるのに不思議と不安は無かった。 飛行機を乗り継ぎ、バスに揺られて少し街外れの教会にたどり着いた。 屋根の上に建つ十字架、その下に吊された錆び付いた鐘が嫌に印象的な教会だ。 まだ未熟な俺には、この長旅は酷く苦痛だった。 知らない国に知らない街、知らない言葉が飛び交う中で、何とか知らない場所へとたどり着いた。 少し小綺麗な教会は、目を凝らすとペンキを塗り替えたばかりなのが解った。 近くで見ると、ペンキの奥でヒビ割れた外壁が年月を物語っていた。 思ったよりも早く着いたな。 朝日を背にして教会の前に荷物を置く、腰を降ろすと脚が妙に重く感じる。 草木を風が撫でると、心地好い音が耳に留った。 空を見上げると、薄い雲がゆっくりと流れては遥か彼方へ消えて行く。 どこも空は変わらないな。 感傷に浸りながらも、心が妙に落ち着かない。 何をしても何を想っても頭の中は・・・。 ギィィィィ――― 急に教会の扉が開いた。 驚き、急いで立ち上がるとズボンの埃を叩いた。 「おや、もういらっしゃいましたか」
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