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現れたのは神父。
そう・・・上下黒で身を包み、首から目立った十字架をぶら下げていた。
ふくよかな体型のこの男が・・・俺には・・・俺の目には神父に映った。
・・・
確かに神父で間違いないのだが、
「松尾、誰だ・・・来たのか?」
奥から声が響いた。
「ええ、来られましたよ」
神父は俺に微笑みかけると、奥へと手招きで促した。
緊張が走る。
日本語で違和感が有るが、声色で分かる。
あの人だと。
促されるまま、俺は震える足で奥へと歩を進める。
脚を踏み出す度に床板が軋み、合わせる様に胸が高鳴る。
視線の先、ステンドグラスから漏れる光に照らされた彼女の姿が在った。
長い黒髪、透き通る白い肌、大きな黒く深い瞳。
今まで出会った誰よりも美しく、何より気高い至高の華。彼女の前では聖母すら嫉妬に駆られるだろう。
俺は彼女の言葉を待った。
いや、想像した。
「ようこそ」「よく来た」「遅かったな」もしくは「お前は私のモノ」想像をフルに働かせた、だが小さな口から発っせられた言葉は、違った。
・・・
「お帰り」
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