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「あら、ばれてたのか。いやー、たいした観察眼だこと」
「……嫌でも気が付くと思うがな。あれだけ興味津々な気配を漂わせて物陰から覗かれたら」
「冷静ね~、せっかくの告白だってのに。やーんなっちゃう」
「……その変な裏声をやめろ」
佐藤信長(サトウノブナガ)。高校二年になって同じクラスになったお調子者で、そのイガグリのような坊主頭と、歴史に縁のある特徴的な名前が妙に印象的な男だ。そいつは右の眉に貼ってある絆創膏(バンソウコウ)を指でさすり、どこか呆れているような表情を作る。
「っていうか、渚(ナギサ)の告白まで断っちまうなんてなあ。言い寄ってくる女子の告白、全部断ってただろお前。だから、絶対渚だと思ってたんだけどよ」
「……特に決まった相手がいるから断ってる訳じゃない」
そう返すと、佐藤は眉根を寄せて黙り込んでしまった。俺が校門に向かって歩き出すと、その後を無言でついてくる。
「……他に告白してきてた奴らは、そう仲良くもなかったからいいけどよ。俺達、渚とは結構長い付き合いじゃん。なのに、渚にも他の奴と変わらない返答ってさぁ」
「付き合いが長いからこそ、変に言葉を濁せないだろう。はっきりさせておいた方が、後腐れもなくていい」
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