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「それにしても突然だったな、お前の兄貴」
車を走らせながら、神島裕也は、ちらりと助手席に視線をやる。
「そうね…あなたごめんなさい。
私の兄の通夜に無理矢理ついてきてもらって…」
「当然のことだよ。
俺にとっても義理の兄貴になるんだ。
第一、沙羅の生まれ故郷にやっと行けるんだし、むしろ嬉しいよ」
沙羅は、長い黒髪をかきあげ、力なく笑う。
「ありがとう」
「お礼なら、ランエボでいいよ」
「もうっ」
裕也の冗談に少し沙羅の表情が和らぐ。
裕也にしたら、冗談でなく切実な願いだったが…。
裕也は、沙羅にずっとランエボがほしいと訴え続けているが、馬力あろうがなかろうが、音がうるさいから嫌だといわれ、車は今のところアクセラだ。
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