第一夜  天職

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「ハッ、お前らオレと闘る気かよ? だったら・・・・」 オレが剣に手をかけるそぶりを見せると、 騎士達は剣を握る力を一層強める。 「オレは逃げる!!」 オレは1人の騎士の頭を踏み台にして跳び、 呆気に取られた騎士達の横を駆け抜け、 窓に体当たりして突き破った。 痛い、これマジ痛い。 小説とかでこれをやってるのをよく見かけるから、 意外に痛くないかと思ったんだけど、 半端なく痛い。 絶対痣ができてるよこれ。 「嘘だろ?」 外に逃れた事で、一旦安心したオレを待ち受けていたのは・・・・・ 「お前は既に囲まれている。 大人しく投降しろ!! さもなくば命は無いと思え!!」 ネズミ一匹逃さないと言うような、 500以上の騎士達による完璧な包囲網でした。 「ハッハッハ、泣いても良いかな?」 オレには死神が憑いてるんですね。 分かります。 「・・・僕達はただ、平和に暮らせる世界が欲しいだけなんです。」 これは自由の翼と称された、太古の時代の英雄、 輝羅大和が最後の闘いで遺した言葉。 今ならアンタの気持ち、分かる気がする。 「誰が捕まってたまるかぁぁぁ!!」 勝ち目がないからって、闘うのを止めて言いなりになるって、 そんな事できないでしょ? 輝羅大和はこうも言った。 だからオレは諦めんぞ!! オレは酒場の壁を蹴り上がり、 そして屋根に上がった。 オレの行動が予想外だったのか、 騎士達はどうしたらいいのか分からず慌てふためく。 すると、何か偉そうなデップリとしたオッサンが、 騎士達を叱咤した。 「お前ら何をしている!! 魔法でもなんでも使って、 絶対に奴を捕らえろ!! とりあえず生きていればいい!」 あれ、さっき投降しなければ命はないとか言ってなかった? これは最悪捕まっても大丈夫なんじゃない? しかし、オレの期待は次の言葉で粉々に打ち砕かれる。 「とりあえず生きていれば、 腕の1、2本無くてもいい。 捕まえた後目をくり抜こうが、 玉を潰そうが、鼻をもごうが構わない。 絶対に逃すな!!」 オッサン、色々とグロいよ。 玉を潰すとかお前、男のシンボル奪う気かよ。 こうして、オレの悲劇の逃走劇が始まった。  
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