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″あの人″の話し方は特徴的で内容が小難しく当時のオレの頭では恐らく3割も理解できていなかったであろうが、
それ故に12年経った今でも一言一句違わず記憶している。
「言葉とは普遍的な意味を持つためある者が見聞きした情報を他の者に伝える手段として優れているが、
人間は過去の経験や自身の感性によって個々が異なる感覚的なイメージを言葉に反映する。
例えば少年が大きいと言う物を、オレは普通と言うかもしれない。
つまり、所詮人間が言葉を以って伝えられるのは物事のほんの表層のみ。
それを踏まえてもう一度聞くが、
少年よ君は人が見聞きした事を聞くだけで満足できる人間か?
満足できると言うのならばそれで良い、きっと君はそちらの方が幸福な人間なのだろう。
しかし満足できないと言うのであれば、実際にその足で赴き自分の目で見てくると良い。
それが少年にとって吉と出るか凶と出るかは分からないが、これだけは確かだと言える。
世界は広いぞ、少年────ってさ。」
これが今オレがここにいる理由。
更に言えば暗黒時代最強の神獣を筆頭にどう考えても一般人が相手にするべきではない数々の化け物達と闘う羽目になった原因の根源だ。
突き詰めれば実は″あの人″が死神派遣協会の発祥なんだよなーなんて少しばかり恨み言を心の中で吐いていると、
課題をやっていたはずがいつの間にか美佳さんの隣にいてオレの話を聞いていた愛が興味津々と言った様子で尋ねて来た。
「それでそれで、その後レオンさんはその人と会えたんですか!?」
チクリと、魚の小骨が刺さったような痛みが走る。
やっぱりこれは言わなきゃ良かったなと後悔の念が押し寄せるが、後悔先に立たずだ。
これを言えば気分を盛り下げるだけなので2人には悪いが、ここまで来たら最後まで付き合ってもらうとしよう。
「────死んだよ″あの人″は。」
え? と話の急展開に2人揃って疑問の声を口にする愛と美佳さん。
だがそうなると分かっていたオレは2人に構わず続ける。
「話せば少し長くなるんだけどさ────────
あれは1年と半年程前。
神獣序列3位との死闘で負った傷が癒え、リハビリがてらに各地の遺跡を調べて回っていた頃。
多くの人間は知らないが、世界に滅亡の危機が迫っていた。
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