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『成る程、どうやらこの命を懸ける理由ができてしまったようだ。』
脈絡の無い突然の宣言に理解が及ばず一体何をと聞き返す前に″あの人″は魔王軍が来たる方向へと歩み去り、
それから2日経っても魔王軍は現れず近付いて来る気配すらなかったと言う。
そして久しぶりに″あの人″に関する情報が入り、
その見たという場所が魔王軍と目と鼻の先であったため危険極まりないのだが吐き気すら催す胸騒ぎに居ても立ってもいられず、
万一の場合に備えてフル装備でそこへオレが到着したのが魔王軍が進攻を開始してから5日後。
その重い病気を患った娘と一緒に心中を決心した一家が最後に″あの人″と会ってから2日後でもあった。
″あの人″の最後の言葉をその一家の父親から聞いた瞬間それを望まないにも関わらず鍵穴に鍵が嵌まってしまい、
オレの中で完成した最低で最悪なパズルが間違っている事に望みをかけて″あの人″が去った方向へ行ってみると、だ。
そこに広がっていたのは、元の自然豊かだった土地が見る影も無いくらいに傷付き荒れ果てた大地。
恐らく《枯渇龍リュブリエ》が己の生命力を回復するため吸われたと思われる干からびた魔獣の死体が至る所に転がり、
神獣も互いの攻撃や″あの人″の剣で急所を何度も貫かれ死んでいた。
そして誰も知らない真の救世主が人類の未来を賭けて闘い抜いたその戦場の中心にあったのは。
────人間で言えば心臓と内臓器官の役割を果たす生命根を断たれた《枯渇龍リュブリエ》と、
その生命根に半分だけ突き刺さったまま折れてた″あの人″の剣。
それと《枯渇龍リュブリエ》が死の間際に多分″あの人″を道連れにするため放った腐敗の息吹で、
黒く腐った地面の中に落ちてたペンダントだけだったよ。」
無言。
再開の感動話を期待していたはずが、ただただ気分を憂鬱にさせるような話を聞かされた2人は暫く沈黙を保った。
ここでは年長者なだけに(それでも見た目二十代だが)先に何か言葉をくれるのは美佳さんだと思ったのだが、
2、3度喋る素振りを見せてから愛が意を決したように口を開いた。
「レオンさん……………………鼻と口の端から血が垂れてます。」
「…………台無しだな。」
「です。」
前々から分かり切っている事だが、シリアス耐性低過ぎだろオレの体。
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