第0夜 逃げるが勝ちだ!

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「レオンハルト・スターダスト殿ですか。 本当にありがとうございました。 そうだ、先程姫を治していただいた、 あの薬は一体何なのですか?」 「ああ、これは万能薬・・・・っ!!」 今度はオレの危険レーダーが、 緊急警報を上げた。 冷静になって考えてみると、 古代秘宝は個人での所持を全世界で禁じられている。 何故なら古代秘宝は強大な力を持ち、 1つ間違えれば、国一つが消し飛ぶほどのものもあるからだ。 そしてオレはこの万能薬を含め、 3つの古代秘宝を所持している。 これがもしばれたら、死刑は免れられない。 汗が滝のように流れる。 馬の駆けてくる音が、まるで死神の足音のようだ。 ・・・・逃げろ!! 本能がそう叫び、オレは全力で駆け出した。 「お待ち下さい!!」 姫がそう叫ぶが、待つ気など微塵もない。 足は限界に近かったが、 一刻も早く逃げなければオレが殺されるもの。 「行ってしまわれた・・・・」 3人はものすごい速さで去って行くレオンハルトを、 ただ見ている事しかできなかった。 「私の命を救っていただいたのに、 御礼も満足な言えないとは・・・・」 「王族の命を救ったって言うのに、 一切の見返りも求める事なく去っちまうなんてな。」 「貴族に取り立ててもらう事も可能でしたのにね。」 「ええ、器の大きな方なんでしょうね。 しかし、王族が恩を受けたというのに、 それを返さない訳にはいきません。 何としてでも探し出し、改めて御礼をしなくてはなりません。」 実際は全然違うのだが、 レオンハルトをまるで勇者のような人物と勘違いしてしまった3人。 これが後々に、レオンハルトへ不幸となって降り注ぐ。 「も、もういいだろ。」 走り続ける事約10分。 もうあの3人は見えない。 「ハァ、今日は散々な一日だったぜ。 無料奉仕みたいな事をしちまったし。 ま、でも・・・・」 オレは手の中にある万能薬を見る。 「ちょっと減っちまったが、 こいつがあればこんな生活ともおさらばだぜ。」 オレはルンルン気分で拠点としている、王都レメフィリアに向かった。 しかしオレは気づいていなかった。 不幸の歯車が、急速な勢いで回り始めている事に。  
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