第一夜  天職

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「さてと、まずはどうするか?」 この万能薬を、そのまま裏の取引所に流すのは馬鹿のやる事だ。 それだと足元を見られ、4億Я程にしかならない。 となると、不治の病とかを抱えている貴族とかを治療して、 代金をもらうのが一番の良策だな。 まずはそういう貴族の情報を集めないとな。 オレはとりあえず、情報が集まる酒場に向かった。 「やけに騒がしいな。」 今日はいつもになく騒がしかった。 至る所で、ある話が飛びかっている。 なんでも、騎士達が総力を上げてある人物を探しているようだ。 それは国際的犯罪者だとか、 聖国の君子だとか、はたまた伝説の魔法使いだとか。 まあなんにせよ、かなり高名な奴だろ。 できたらそいつの顔を拝んでやりたいぜ。 そう思いながら、オレは酒場へ足を進めた。 「おー、いるいる。」 扉を開けると、酒の匂いがプンプンと漂ってくる。 見ると船乗りや商人達が、 日々の鬱憤を晴らすため浴びるように酒を飲んでいる。 いつ来てもこの光景は変わらないよな。 オレは空いている席に着き、 店で一番高い酒を瓶ごと頼んだ。 そして周りの奴らの話に耳を傾ける。 さて、オレの知りたい情報を知ってるのはどいつかな? 酒場では、ほんと面白いくらいに情報が入ってくる。 そいつにとっては役に立たない事でも、 オレにとっては宝のような情報が入ってくる事も珍しくない。 その時、ある男の話がオレの耳に止まった。 「・・・それでよ、そこの領主の娘がぶっ倒れたらしく、 何人も治療士を雇ったが全く治らないんだと。」 発見! オレは注文した酒の瓶を持ち、 男のテーブルまで行く。 「なあ、今の話を詳しく聞かせてくれないか?」 オレはその男の前に、酒の瓶を置く。 「お、気前がいいな。 よし、教えてやるよ。 マリアナを治めるディーベット子爵の娘が、 原因不明の病で一週間前に倒れたんだ。 何人も高名な治療士を呼んだが、 効果が全くないらしい。 それで、治した者には莫大な褒美を与えるだとさ。 こいつは丁度マリアナを通った時に聞いた事だから、 確かな話だぜ?」 「そうか、サンキュー。」 欲しい情報も手に入ったので、 オレは酒場を出る事にした。  
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