第一夜  天職

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だがその時、酒場の扉が乱暴に開けられた。 「全員動くな!!」 剣を携えた騎士達が、酒場に次々と入って来る。 え、ちょ、何? 「この酒場に、疾風の異名を持つ盗賊、 レオンハルト・スターダストという者が入ったとの目撃情報があった。 今より暫しの間その者の確認をする故、 動かないでもらおうか。」 へー、騎士達が総力を挙げて捜索してるのって、 レオンハルト・スターダストって奴だったんだ。 名前だけは凄そうだよな。 あと疾風の異名とか、お前・・・・どう考えてもオレじゃねえかぁぁぁぁぁ!!! 「肩にかかる黒髪に、両腰に提げた、 スラリとした異国の剣。 隊長、間違えありません! あいつがレオンハルト・スターダストです!!」 騎士の1人が、無情にもオレに向かってデスコールを下す。 テメーなんて事してくれてんだ!!! おかげで・・・・オレには、明日という希望の光が見えない。 騎士達は剣を抜き、オレを取り囲む。 おいおい、オレとチャンバラでもしようってか? 言っとくけど、5分も経たずに死ぬよ?・・・・・オレが。 「レオンハルト・スターダスト。 貴様は国王様直々に、軍全体に緊急捕縛命令が出されている。 抵抗は無駄だ。 大人しく投降してもらおうか。」 そう言って隊長と呼ばれた奴がオレに近づいてくる。 おい、今なんて言った? 国王直々にオレの緊急捕縛命令が出されてるだと? ふざけるのも大概にしろよ。 なんで一国の王が、こんなしがないトレジャーハンターをわざわざ軍まで使って捕まえるんだよ? ああ、あれか? この国の国王ってのは、 オレを嫌う神様の化身か何かか? だとしたら話は早い。 「誰が捕まってたまるかよ!!!」 オレは近づいてきた隊長の顎を蹴り上げ、 そのまま連続で踵落としを叩き込む。 オレの仮説が正しいとすれば、 このまま大人しく捕まったとしても、 恐らく殺されるだろう。 オレを殺す理由なんていらない。 だって神様はしょっちゅうオレを殺そうとするんだもの。 オレが隊長をノックアウトした事で、 酒場にどよめきが走る。 騎士達はオレを警戒し、 いつでもオレに斬り掛かれる体勢に入る。  
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