俺で解決。俺が対決。

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「せ、先生……怖いです。と、とりあえず落ち着いてください。俺は別に水澤の想われ人だから助けにいくわけじゃありません。問題はそこじゃないんです。水澤が気持ちを押し殺してまで婚約を決める意味があるかどうかです」  そこで俺は一息おく。次に言うことは俺に気持ちを言ってくれた水澤に対して失礼かもしれないけど、言うしかない。いまの俺の本心を詩奈先生にぶつけるんだ。 「俺は、水澤が他の人を好きだったとしても、いまと同じように止めに行こうとしていたと思います。だって……俺と水澤は友達ですから。……それに部員が苦しんでいるのは部長としても見過ごせないですよね」 「……友達、か。ふん、本当に馬鹿な奴だ。友達の為に家族に直談判する奴がいるものか。お前の青春ごっこにはかまってられんな。そういうのは余所でやってくれウチに持ち込むな」  これ以上話す気はないと言った風に先生は俺の反応も聞かずに背を向けて行ってしまう。 「先生!! まだ――」 「そういえば、大事なものを忘れてきた」  引き留めようとする俺の声を遮り、こっちを向かないまま詩奈先生は言った。 「は?」  ……大事な物? 話を逸らそうとしているのか? 俺が発言の意図を探るより早く、先生は話を続ける。 「神田。すまんが取りに行ってくれないか。場所は客間なんだが……。いま、父さまと唯が客人と大事な話をしてるから邪魔しないように頼むぞ。場所は玄関を右に行った通路の奥だ。一階は和室が多いが客間だけは洋室となっているから分かりやすいと思う。いいか? 私が大事にしているものだからな? 間違えるなよ」 「先生……。はい! ありがとうございます」 「頼んでいるのは私だぞ。礼を言われる覚えはないな。では、任せたぞ」 「はい! 必ず!!」  力強く返事をした後、詩奈先生を追い越しそのままの勢いで走る。いま行くからな水澤。
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