2834人が本棚に入れています
本棚に追加
/225ページ
おじさんの視線だけでなく、ここにいる全員の視線が鈴木さんに向き答えを待つ。
「……………………」
部屋にある時計の秒針の音が聞こえるほどの沈黙。
鈴木さんは考えるようにして閉じていた目を開くと、結んだ唇が動く。
「いえ、唯と神田さんは同じ高校で同じ部活動をやっております。関係性は先輩と後輩という間柄です」
そう言った鈴木さんの言葉にホッと胸を撫で下ろす。無駄に溜めが長かったせいか、緊張が高まっていた。
実際鈴木さんが言った通りなんだけどね。
鈴木さんの的確な説明のおかげで緊張で張りつめた空気が少し和らぐ。
「なるほど、後輩と先輩と。それ以上でないと。そういうことだな?」
おじさんが念を押すように鈴木さんに問う。
「はい。唯と神田さんは、まだ恋人の関係ではないです」
「そうか。ならいい」
……あ。いま、いまサラッと鈴木さんが失言した。
意図して言ったのか、無意識なのか分からないけど、この失言におじさんが気づいたら不味い。
でも、気づいてないみたいで、おじさんは納得して――。
「まだ?」
シンと静まったこの空間に陸橋の声が響く。響いてしまった。
おいっ! ソファー野郎!! お前がそこに触れるなよぉぉぉお!! 変な時に存在感出さないでお前は黙ってソファーと同化しとけよ!
最初のコメントを投稿しよう!