俺で解決。俺が対決。その②

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 おじさんの『どうするつもりだ』って言うのは、告白の返事のことだろう。  そうだよな……。まだ、返事をしていない俺は、水澤に返事をしないといけない。俺が水澤を追いかけるってのことは告白の返事をするってことだ。追いかけて、なあなあで終わらせてしまう『逃げの選択』なんてこと許されるわけない。  水澤は『忘れて下さい』と言った。でも、それは婚約があったから。それが無くなったいま、俺は水澤の想いを忘れるフリをする必要はない。  正面から受け止めて、返事をするんだ。  ――だから、これはその第一歩。  おじさんは俺の瞳から目を逸らさない。俺も言葉に気持ちを乗せ真剣に答える。 「水澤が、俺のことを好きだと言ってくれたことすっごく嬉しかった。まだ、十五年しか生きてないですけど、その人生の中でも一番胸が躍りました。でも、俺は――断るつもりです」 「ふん。ワシからしてみれば好都合だ。だが、あえて聞こう。何故だ?」  そう言ったおじさんのギラリとした視線が何かを見極めるように俺を射抜く。  もちろん、俺がこの答えを用意した理由はある。  「水澤は告白するときに教えてくれました。俺を好きになったきっかけは、中学一年の夏頃に出会った時のできごとだって。でも、俺は事故でその頃の記憶がほぼないんです。そこの部分だけぽっかりと。でも、水澤はこうも言ってくれました。切っ掛けは昔の俺だったけど、好きになったのはいまの俺だって。――でも、だからこそ、俺は昔の……初めて水澤と出会った自分を思い出す必要があると思いました。あの時の俺は水澤と何を話し、何をしたのか。決して長くはなかった時間で俺は水澤の心に何を残したのか。そこを置き去りにしたまま仮に付き合ったとしても、いつかこの空いた記憶の穴が俺と水澤の溝になるかもしれない。俺は水澤の想いに応えるにはまだスタート地点にもたってないんです」 「だから、唯とは付き合えない……と。なるほど、筋は通っているが……納得はできんな」  俺の考えを聞いたおじさんは腕を組み納得していない顔をしてそう言う。
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