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「……素直に答えたからと、交際を許すわけじゃないぞ」
少しだけムッとするおじさん。まぁ、そりゃそうだよな。娘さんを下さいって言ってるようなもんだしな。
「ははっ。ですよね」
「だから、さっさと記憶を取り戻してこい。この話の続きはそこからだ」
「え、続き……?」
それってどうゆう意味……。
「つまり、『神田君のことを認めた』ってことよ。ねっ、お父さん」
浮かんだ疑問に混乱する俺に楽しそうにおばさんが教えてくれる。
「母さん! いらんこと言わんでいい! 神田も考えが纏まってるんなら、はやく唯の所に行かんか!」
恥ずかしいのを誤魔化すようにそっぽを向いたまま、扉を指差し言う。これまでのおじさんらしからぬ態度だ。おじさんの照れ隠しが可笑しくて少し笑ってしまった。
でも、そうか……。認めてくれたんだ。
おじさんに認めて貰えた。それだけでなんだか不思議と頼もしい。これから水澤の所に返事をしに行くけれど、勇気になる。
「はい! きっと、取り戻してまたお話しをしに来ます! ありがとうございました!」
おじさんに気持ちをぶつけ良い具合に気持ちの整理ができた。その意味も込めてのお礼。
あとは、水澤に告白の返事と一緒にこの想いを伝えるだけ。水澤が俺の考えを理解してくれるかは分からない。
むしろ、俺の自己満足のせいで水澤の気持ちに応えることができない。なんて知ったら、軽蔑されるかもしれない。
けど、それでも、伝えるんだ。いまの俺の気持ち。そして考えてることを。
それが、新しく始まる俺たちの最初の一歩だと思うから。
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