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「そうですか……鈴木が。……あっ! そういえば、すみません。あんなことになっちゃって。神田先輩にも迷惑かけてしまいました。……あと、先輩を残して逃げちゃってごめんなさい。あの時はそこまで考えが回らなかったです」
多分、ここに来てから俺を置いて逃げたことに気づいて罪悪感が出てきたんだろうな。
本当に申し訳なさそうに謝る水澤は、声もしょげている。
「いや、まぁ……すっげー恥ずかしかったけど、あれは水澤のせいじゃないしな。それにいいきっかけになったよ」
そう言って水澤の隣に立って屋敷の庭――和洋折衷の可笑しなセンスをした景色を見る。
「きっかけ……ですか?」
「うん。水澤が部屋を出た後に俺も『この流れに乗って逃げちゃえー』って思って部屋を出ようとしたんだ。もちろん、水澤が心配だったから追いかけようとしたのもあるぞ。そしたらおじさんに止められて『お前は唯のことをどうするつもりなんだ』って聞かれたよ」
「お父様がそんなことを……」
「うん。それで、水澤に聞いて欲しいんだ。…………告白の返事と。俺の決めたこと」
そう言って景色から視線を水澤に移し表情を引き締めて、水澤の目をしっかりと見据える。
「……はい。聞かせて、ください」
そう言った水澤の声は少し……ほんの少し震えていた。緊張に身を包んだ様子が見てとれる。
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