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「うん。これは全部俺のわがまま……って言うか自己満足。だけど、俺は昔の水澤との記憶を取り戻すまで付き合わないって決めた。俺は昔の俺と水澤の始まりをしっかり思い出したいんだ……。水澤はいまの俺を好きになったって言ってくれたよね? でも、昔、俺と水澤が会ったことがあるって知ってしまったからには、俺はそれを無視することはできない。無視すればいつかこのことが原因でわだかまりができるかもしれない。俺と水澤の間にそんなものあって欲しくないんだ。だから……待っていてほしい。俺が昔の記憶が戻るまで。……わがままだってのは分かってる。気持ちを伝えてくれた水澤に失礼なことをしているのも分かってる。でも、それでもこれは譲れないんだ。だから……。俺のわがままを許してほしい」
俺の決めたことを……そう決めた理由を、包み隠さずすべて水澤に伝える。
俺の伝えるべきことは全部言葉にした。あとは水澤の返事を待つのみ。
「――嫌です」
……待つのみと思っていたが、待つ暇もなく間一髪も入れずに水澤に断られた。
「なッ…………」
マジか……。
心のどこかで『水澤なら真剣に気持ちを伝えれば分かってくれる』と思っていただけにショックは大きい。てか、再起不能かもしれない……。
ショックでフリーズする俺に構わず水澤は話し続ける。
「神田先輩が婚約を止めに来てくれて嬉しかったんです……。いまも先輩に『好きだ』って言われて嬉しくてどうかなっちゃいそうです。それなのに待って欲しいなんて無理です。私だけここで止まっているのなんて嫌です……。だから――私も先輩の記憶が戻るお手伝いします! 先輩と一緒に頑張って苦労して……私たちの新しい関係の始まりに立ちたいです」
……………………ん?
思考停止していた頭を再起動させて水澤の言ったことの意味を理解していく。
つまり、、、、俺の考えを認めてくれるってこと……か?
「…………み、みずさわ~」
理解すると同時に体から力がドッと抜けた。
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