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俺と水澤はお互いの気持ちを確認し、新たなスタートをきった。
『記憶を取り戻す』
これがどれだけ大変なことなのかは想像がつかない。でも、水澤となら必ず成し遂げられると思う。
……だけど、現実はそんなに甘くなかった。
押し寄せる日常は俺たちの事情なんてなんのその。解決するのなんて待ってくれないわけで、
「いいだろう。貴様とはいずれ決着をつけないといけないと思っていたところだ。そこまで言うなら私から奪い取ってみるがいい!!」
悪人顔で電極棒を両手に持つ詩奈先生からの謎の決闘が申し込まれる。
「一番じゃなくていいよ。……だから――モロッコに住もう。結婚して涼也」
顔を真っ赤に染め目の焦点が定まらなくなっている美葉が耳元で囁く。
「美葉ねーにはちょっきし悪いけど私はゆいゆいの味方するよ~」
「にぃには美葉お姉ちゃんがお似合いなのです」
双子の妹は未来のお姉ちゃんを決める為に争いを静かにはじめる。
「僕も引くわけにはいかないからね。勝負をしようじゃないか、神田涼也」
そして、なんだか陸橋と引くことのできない男と男の闘いに。
現在は現在で大荒れ模様。
非普通が非普通を連れてくる!? これがいわゆる芋づる式か!?
「先輩のことは私が一番知っていないとダメなんです。だから……全部。先輩の全部を私に下さい」
潤んだ瞳を目一杯近づけさせた水澤は俺の全てを求める。
俺は、記憶と共に過去と真実に向き合うことを迫られる。
そう、それが俺が実家を離れて暮らす理由――――――。
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