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人間は嫌いだ。
どうも彼等は、明らかに私の姿を疎んでいる様に思える。
この世界は歪んでいる。
私が何処で闊歩しようが、人間共には全く実害など無いと言うのに…。
そればかりか、人間共といえば私が視界に入る事さえ許し難いと言う様な輩さえいる。
あまつさえ彼等は、私が横切るだけで憤慨し、物理的干渉をしてくる輩までいる。
今日を過ごす迄に人間共に受けた傷は、今世界中にいる人間共の両の手の指を全て数えても追い付く様なものではない。
可笑しいと思うだろうな…。
何故それほど?
世界中の人間の両の手の指を全て数えても?
単純に長生きなだけだ。
幾年も過ぎ去ったが、相変わらず人間共は私に対して、酷く暴力的だ。
反抗心もあった。
人間と私が争った事も。
一時期は滅ぼそうかとも思った。
だが彼等は、今でも私に対する嫌悪感を忘れず抱いている。
もう私は彼等に対する反抗心は消え失せていた。
人間共には世代を越えて、子孫まで言い伝えられている。
『黒猫が横切ると不幸になり、魔力が失われる』
一体いつ、誰が不幸となったのか。何故そんな事を信じられるんだ?
私に不幸が宿っているのならしょうがない事だが…。
彼等は不幸になったのだろうか?
自身が忌み嫌う存在が横切った事で、不幸となったのだろうか。
…否。
それはまず無いだろう。
何故彼等はこんなにも私を遠ざける。大した魔法など使えぬくせに…。
弱い人間共が《天老三大魔導師》などと言う称号を与え崇めても、我に敵う事も無いのに。
大体、誰のお陰で人間ごときが魔法を使える様になったのだか。
まさしく私が魔法の真祖だと言っているのに。
まったく…崇める対象を間違っている。
いっそ、前の様に人間の姿になって魔法都市を大胆に歩くのも良いな。
そうだな、そうすることにしようか…。
ある一匹の黒猫が住み処より出でて、人気の無い薄暗い路地を走る。
まだ日中とあって、真上に顔を出している、焼けつく様な太陽の日差しに当てられ、ふらつきながらも路地裏を進み、眼前に広がる目映い光へと向かう。
一匹の黒猫が、路地裏からヒョッコリと顔を出して辺りを見渡し、注目を晒す前に素早く顔を引っ込めた。
そして、人間の姿へと成り変わり、勢い良く路地裏から飛び出した。
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