雨に打たれて

2/16
前へ
/16ページ
次へ
「………。」 「まだ気にしてるんだ?」 愛着なんて湧いちゃ駄目ってルールでしょ? そう言って近付いてくる実験体。 真っ直ぐに延ばされる紅い視線。 灰色の髪が揺れ動く。 「お前は…」 後ろから顔を出した幸村が言い掛けた。 それを制止するように鈴が鳴る。 「俺はZion、信長の命で此処に来たんだけど?」 差し出された紙を見ると、確かに信長が書いた文面。 間違いない。 「“完全体”って言った方が、理解が早いかもね」 それを聞いて、元親が身を乗り出した。 怒りと悔しさが入り混じっているのが見て取れる。 「テメェ…!」 「落ち着け元親。そいつに当たっても帰っては来ない」 幸村の制止を聞いて、調子に乗ったような声。 わざと弱い部分を刳る。 「いいよ、俺に当たっても。死人に口無し、何をしても反応は返って来ないし…」 「…何が言いたい?」 「1回死んだら、憎しみも悲しみも、喜びもしないってコト」 ニヤッと意味深な笑いを浮かべ、鈴の音を響かせながら部屋を出て行った。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加