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「………。」
「まだ気にしてるんだ?」
愛着なんて湧いちゃ駄目ってルールでしょ?
そう言って近付いてくる実験体。
真っ直ぐに延ばされる紅い視線。
灰色の髪が揺れ動く。
「お前は…」
後ろから顔を出した幸村が言い掛けた。
それを制止するように鈴が鳴る。
「俺はZion、信長の命で此処に来たんだけど?」
差し出された紙を見ると、確かに信長が書いた文面。
間違いない。
「“完全体”って言った方が、理解が早いかもね」
それを聞いて、元親が身を乗り出した。
怒りと悔しさが入り混じっているのが見て取れる。
「テメェ…!」
「落ち着け元親。そいつに当たっても帰っては来ない」
幸村の制止を聞いて、調子に乗ったような声。
わざと弱い部分を刳る。
「いいよ、俺に当たっても。死人に口無し、何をしても反応は返って来ないし…」
「…何が言いたい?」
「1回死んだら、憎しみも悲しみも、喜びもしないってコト」
ニヤッと意味深な笑いを浮かべ、鈴の音を響かせながら部屋を出て行った。
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