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「ねぇ信長様、実験体をい~っぱい作ったら、もっと早く研究が進むと思うんだけど?」
わざとらしく、腕に引っ掛けている鈴を鳴らす。
「それで、どうしたいのだ?」
「全ての棟を挙げて大量生成して欲しいんだ。そうすれば、費用もそんなに掛からないし、研究が進むと思う」
「ほぅ、貴様は良い事を考える」
検討してみようと言った男の横を通って廊下に出る。
―――人間なんて、すぐに騙せる…
嘘を吐く代わりだね。
心の中で嘲りながら廊下を歩く。
「フォア、仕事行ってくるよ」
「行ッテラッシャい」
ドアの陰から見えた銀髪に、水硝子の向こうで見た顔を見留める。
銀髪に紫の瞳、間違いない。
彼女はあの実験体だ。
同時に、少し気になっていた実験体でもある。
だが、俺の顔を見たことが無いであろう彼女は、すぐに扉を閉めてしまった。
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