雨に打たれて

5/16
前へ
/16ページ
次へ
――――PLLLL… 壁にハンガーで引っ掛かっていた白衣の胸ポケットから音が鳴る。 佐助はすぐに電話を取り、廊下の外に飛び出して行った。 今までそんなことは滅多に無かったが…。 今のこの時が、その“滅多”なのだろう。 「……。」 嗚呼…モヤモヤする。 政宗が居なくなってからずっとだ。 ―――みんながバラバラに離れていく感覚…――― 彼女が生きていれば…。 こんな風に何かが起きる…いや、せめてこんな形で何かが起きることは無かったかも知れない。 「俺はお前に何をしてあげられた?」 彼女は何か持っていた。 みんなの心を繋ぎ留めるような何かを。 たとえ彼女を傷付けた“あの時”でも…。 最後まで誰も諦めないでいた。 なのに、彼女の子たちさえ居なくなった今は…。 ―――みんな、現状に納得できないでいるだけだよな… やっと分かち合うことが出来たのに…。 新しい実験体はいとも簡単にそれを壊そうとする。 所詮その程度だと嘲るように…。 「…くそっ…」 憎く思う、悔しくも思う、それなのに似過ぎる実験体は擦り抜ける。 彼女とは何もかも正反対に見えるのに、決定的な“ナニカ”が似ているような気がしてならない。 「似てる訳ねぇだろ馬鹿…」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加