0人が本棚に入れています
本棚に追加
――――PLLLL…
壁にハンガーで引っ掛かっていた白衣の胸ポケットから音が鳴る。
佐助はすぐに電話を取り、廊下の外に飛び出して行った。
今までそんなことは滅多に無かったが…。
今のこの時が、その“滅多”なのだろう。
「……。」
嗚呼…モヤモヤする。
政宗が居なくなってからずっとだ。
―――みんながバラバラに離れていく感覚…―――
彼女が生きていれば…。
こんな風に何かが起きる…いや、せめてこんな形で何かが起きることは無かったかも知れない。
「俺はお前に何をしてあげられた?」
彼女は何か持っていた。
みんなの心を繋ぎ留めるような何かを。
たとえ彼女を傷付けた“あの時”でも…。
最後まで誰も諦めないでいた。
なのに、彼女の子たちさえ居なくなった今は…。
―――みんな、現状に納得できないでいるだけだよな…
やっと分かち合うことが出来たのに…。
新しい実験体はいとも簡単にそれを壊そうとする。
所詮その程度だと嘲るように…。
「…くそっ…」
憎く思う、悔しくも思う、それなのに似過ぎる実験体は擦り抜ける。
彼女とは何もかも正反対に見えるのに、決定的な“ナニカ”が似ているような気がしてならない。
「似てる訳ねぇだろ馬鹿…」
最初のコメントを投稿しよう!