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「注文は・・?」 蚊が耳元を瞬間で通り過ぎるようなむず痒い声に、美香はハッと顔を上げる。 美香が顔を上げると同時に、小太りな女性もたじろぎハッとするが、すぐに威圧感たっぷりなオーラを取り戻した。 あぁ、 ここは腐っても喫茶店・・ 飲み物くらいは置いてて当たり前かと美香は少しの安堵を覚え、珈琲でも注文しようと声を出そうとする前に、先手を打たれたかの様に、またむず痒い声が聞こえてきた。 「ゲームしないなら、有料だけど・・。」 美香は、いささかムッとした。 どこの誰が自ら喫茶店に入って、無料で飲食しようとするのか、そんなわかりきってる事を、従業員らしき人間にえらそうに忠告される筋合いはない。 そもそも、こんな場所を待ち合わせにする桐山にも呆れる。ここは絶対、奴に払わせてやる。 目の前にいる女性の言葉に腹が立ち、空腹が余計に増し思考がせこくなってしまったじゃないかと美香は軽く相手を睨みつけた。 そして、ついさっきまで珈琲をオーダーしようと考えて、喉元まで出かかっていた言葉をもみ消し、別の言葉を用意する。 「ねぇ、何か食べたいんだけど?」 美香の問いに答えたのは小太りな女性ではなく、カウンターの奥の厨房?にいるのだろう、姿の見えない誰かだった。 「オムライスなら、作ってやるよ。」
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