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序章
2011年8月……
憂鬱な濃灰色の空が、広がっている。
その下で飛沫を上げ波が激しく揉み合う。
海がひどく荒れている。
上空をジークの編隊が飛行して行く。
京一は操縦悍を握り締めていた。
1機のジークが編隊の先頭に躍り出て軽く翼を振る。
「敵か!? 」
京一の緊張が一気に高まる。
味方のジークを見ると風防ガラス越しにパイロットが下を指差している。
素早く低空に視線を送る。
敵のキャットの編隊が飛行していた。
京一は握っている操縦悍を勢い良く前に押し倒しキャットの編隊に向かってダイブする。
7・7ミリ機銃の発射レバーを引く。
機銃が発射される激しい感触が京一の腕に伝わる。
弾丸は、キャットの主翼に炸裂。
キャットが火を噴き荒れ狂う海面に激突して行く。
操縦悍を立て直した京一は大きく息を吐いた。
敵の編隊は全滅していた。
明日は髪を切りに心斎橋の美容院に行こう……。
愛するあの人がいる美容院に行こう……。
激しく蠢く海の上空を旋回しながら京一はそう思っていた。
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