一章 色珠

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美容室“ラエ”は雑居ビルの三階にある。 一階にはこ洒落たカフェが入っている。 “あの人とここに来れたら……” 意味のない妄想が膨らむ。 カフェの横の小さなエレベーターのボタンを押す。 あと数秒後にあの人に会うかと思うと胸が高鳴って行く。 エレベーターが、浮き上がる。 空間を上昇する感覚が京一の身を包む。 エレベーターの扉が開き雑居ビルの三階に出た。そこに小さな美容室“ラエ”はあった。 ガラス張りの扉の向こうであの人が忙しそうに動いている。 “ドキリ”と胸が高鳴った。 京一は、覚悟を決めあの人がいる店内への扉を開ける。 「こんにちは」 あの人……兵藤アオイが笑顔で京一を迎える。 京一の体は固くなり額から汗が吹き出した。 ・
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