一章 色珠

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京一が美容室“ラエ”に通い始めたのは半年ほど前の事だ。 京一がバイトをしているコンビニの仲間からの紹介だった。 “ラエ”に来てみると細身の美容師アオイが京一の担当となった。 アオイは25才。 京一は、23才だから京一より2つ年上。 アオイは髪を切りながら無口な京一に色々、話しかけてくる。 何度かラエに通ううちに京一は、アオイと気軽に話せるようになっていた。 そして気がつくと京一は一日中、アオイの事ばかりを考えるようになっていたのだ。 アオイとどこかへ一緒に出掛けたいと思う。 しかし髪を切りに来てどのタイミングでそれを切り出せば良いのかわからない。 もし切り出せたとしても、アオイがそれを断ったら自分はどれ程のダメージを受けるのか? とても京一には、アオイをどこかに誘う勇気はない。 コンビニでバイトをしながらアオイの事だけを想い続ける。 単調で拷問のような日々を京一は送っている。 アオイに髪を切られながら京一は自分の無意味な日々の事を考えていた。 「京一君。何か考え事でもしてるん? 」 不意に京一の髪を切っているアオイが聞く。 京一は身を固くした。 ・
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