異世界チート系前章?

17/21
前へ
/32ページ
次へ
そこを天空と呼んでいいのだろうか… 一面に広がる真っ白な雲。 その先は青空と共に終わりが見えない。 「ぅぅぅッッ ヤッホーぉぉぉぉぉぉぅぅぅぅぅぅッッ!!!!」 そこからハイテンションな大声が。 雲の一カ所が盛り上がったかと思うと、鯨の潮吹きのごとく雲を撒き散らして飛び出した誰か。 タイヤのないスクーターみたいな乗り物に乗る少年と青年の間ぐらいの男…先ほどバラバラになっていた彼だ。 彼は喜びのあまり奇声を出し続けながらアクロバティック…と言うにはあまりにめちゃくちゃな運転を雲と青空の間で行う。 すると誘われたのか一つ二つと何処からともなく現れた不思議な――光る、何か。 それはサッカーボールぐらいの大きさでまるで金平糖みたいな形をしていた。 淡く鮮やか。優しく、鮮烈な輝き。その矛盾が見た人を感動させるような、美しい光だった。 赤、オレンジ、薄紫、そしてキラキラ粒子を振りまくタンポポみたいな黄色。 その四つの光る金平糖が彼に近づき、じゃれるように離れたり、近づいたりを繰り返す。 彼もそれに気付くと不規則な運転を止め大空鬼ごっこを始めた。 彼は笑ったり、悔しがったり、本気で鬼ごっこを楽しみ、 金平糖達も(心と言うものを持っているならば)、心底彼との遊戯を楽しんでいるようだった。 その光景を遥か彼方、 天空と呼べる高い神聖な空間。 だが不思議な事にそこには陸が有り、楽園のような緑と水が存在する、空に浮く島があった。 その端から遊戯を見守る二人の神と一人の化身がいた。 一人はおかしそうに、 一人は羨ましそうに、 一人は無表情に、 ――だけど視線の先の彼が見れば何だか優しそうに―― 遊戯の終わりを静かに待った。 未だ【卵】の彼らと、彼らに好かれた彼のお別れ遊戯の終わりを。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加