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そこを天空と呼んでいいのだろうか…
一面に広がる真っ白な雲。
その先は青空と共に終わりが見えない。
「ぅぅぅッッ
ヤッホーぉぉぉぉぉぉぅぅぅぅぅぅッッ!!!!」
そこからハイテンションな大声が。
雲の一カ所が盛り上がったかと思うと、鯨の潮吹きのごとく雲を撒き散らして飛び出した誰か。
タイヤのないスクーターみたいな乗り物に乗る少年と青年の間ぐらいの男…先ほどバラバラになっていた彼だ。
彼は喜びのあまり奇声を出し続けながらアクロバティック…と言うにはあまりにめちゃくちゃな運転を雲と青空の間で行う。
すると誘われたのか一つ二つと何処からともなく現れた不思議な――光る、何か。
それはサッカーボールぐらいの大きさでまるで金平糖みたいな形をしていた。
淡く鮮やか。優しく、鮮烈な輝き。その矛盾が見た人を感動させるような、美しい光だった。
赤、オレンジ、薄紫、そしてキラキラ粒子を振りまくタンポポみたいな黄色。
その四つの光る金平糖が彼に近づき、じゃれるように離れたり、近づいたりを繰り返す。
彼もそれに気付くと不規則な運転を止め大空鬼ごっこを始めた。
彼は笑ったり、悔しがったり、本気で鬼ごっこを楽しみ、
金平糖達も(心と言うものを持っているならば)、心底彼との遊戯を楽しんでいるようだった。
その光景を遥か彼方、
天空と呼べる高い神聖な空間。
だが不思議な事にそこには陸が有り、楽園のような緑と水が存在する、空に浮く島があった。
その端から遊戯を見守る二人の神と一人の化身がいた。
一人はおかしそうに、
一人は羨ましそうに、
一人は無表情に、
――だけど視線の先の彼が見れば何だか優しそうに――
遊戯の終わりを静かに待った。
未だ【卵】の彼らと、彼らに好かれた彼のお別れ遊戯の終わりを。
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